むかしむかし、金沢に、お銀と小金という仲のよい姉妹がいました。
でも、その姉妹は腹違いで、それぞれ生んでくれたお母さんが違います。
お銀の母親はお銀が小さいことに死んでしまい、小金の母親はお銀の父親と結婚してから、小金を生んだのです。だから母親はお銀には冷たく当たります。
お銀が不幸になっても、小金が幸せならいいと思っていました。
ある日のこと、お銀の父親が仕事で江戸に行くことになりました。母親はいいチャンスだと思い、お銀を山へ連れて行って殺してやろうと思ったのです。
そうとはしらない、お銀も小金も、「わあ、綺麗なお花だこと」と、言いながら、どんどんどんどん山奥へ入っていきました。母親はお銀に気づかれないように、小金だけを連れて家へ帰ってしまいました。
お銀がふときがつくと、小金も母親も見当たりません。お銀は涙声で、「かあさま!小金ちゃん!」と、呼びながら帰り道を探しました。
家では小金が、お銀のことを心配しています。「お銀ちゃん、無事で帰ってきてね」と、祈るような気持ちで待っていました。
小金は、飛びつかんばかりに喜び、「よかったわ、よかったわ」と、言いながら心の中で(ごめんね。こんなかあさまをゆるしてやってね)と、謝るのでした。
ところが、母親は詳しそうな顔で、「おやまあ、ずいぶんとおそかったねえ」と、いっただけで、またつぎの方法を考えていました。
数日後のあるひ、母親はまたお銀を殺そうと、下男に犀川の岸辺に大きな穴を掘らせました。
そして、嫌がるお銀を引っ張って行って、いきなり穴の中に突き落としたのです。
「今度こそ、お前も終わりだよ」
母親はそういうと、さっさと帰ってしまいました。
この様子をみていた小金は、その穴につかづいて、「お銀ちゃん!」と呼びました。
すると、「小金ちゃん助けて!水が入ってくるの、どんどん深くなってくるの」とお銀の声がします。
でも、子供の小金にはどうすることもできません。
しばらくして、お銀の声はまったく聞こえなくなってしまいました。
「お銀ちゃん!お銀ちゃん!かあさまをゆるしてあげてね。わたしもお銀ちゃんのそばへいくから」
と、いうと、深い穴の中い、小金も身を沈めてしまいました。今でも法年寺には、二人のお墓があるということです。